『あたまの筋トレ“認知矯正療法”』
前回、認知機能障害が患者様の社会生活に影響を及ぼしているという話をしました。そして認知機能障害には薬物療法の効果があまり期待できません。そこで近年、認知リハビリテーションというものが発展してきました。その中に認知矯正療法があります。
認知矯正療法とは、認知機能の改善にスポットを当てたリハビリテーションです。認知機能とは簡単に言うと“脳のはたらき”のことで、例えば集中力や記憶力と聞けば馴染みがあるでしょう。これらは学習の基本となる力です。何らかの影響で脳に障害を負ってしまうと正常に機能しなくなり、物事を覚えたり、判断したりすることがうまくいかなくなります。自立を目指して就労支援プログラムなどに参加しても、学習する基礎体力がなければついていけず、余計に自信をなくしてしまう心配があります。先ずは、認知機能を鍛えて学習する体力を育もうというのが認知矯正療法です。
スポーツをイメージしてみてください。野球選手も鍛え上げた筋肉がなければ、カーブを投げるどころかキャッチャーに球を届けることもできません。体操選手もしなやかな筋肉がなければ、吊り輪にぶら下がることも、美しい開脚をキープすることもできないでしょう。つまりスポーツの基本は筋トレです。認知矯正療法をスポーツに例えるなら、この筋トレにあたります。“あたまの筋トレ”で学習の基礎体力をつくり、様々なリハビリテーションプログラムに適応できるようにサポートします。
当院で行っているNEAR(ニアー)は認知矯正療法の一つで、パソコンを使った認知機能トレーニングが特徴です。次回はNEARの内容について詳しく紹介します。
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